はじめに
育児と仕事の両立は、働く親にとって大きな課題の一つです。子育ての時期に合わせて、育児休業や時短勤務といった制度を活用することができますが、どちらを選択するかは個人の事情によって異なります。本記事では、育休と時短勤務のメリット・デメリットを比較しながら、経済的側面や仕事と育児の両立の観点から、どちらが得になるのかを検討していきます。
給付金の比較
まずは、育休と時短勤務の給付金について比較してみましょう。
育児休業給付金
育児休業中は、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。標準的には、休業開始前の賃金の67%が支給されますが、上限と下限があります。上限は33万9,000円、下限は53,000円(2021年度)となっています。
育児休業給付金の支給期間は、原則として子が1歳になるまでです。育児休業を延長した場合は、子が1歳6か月になるまで支給されます。また、次の子が生まれた場合は、その時点で支給が終了します。
時短勤務者支援助成金
時短勤務を選択すると、雇用保険から「時短勤務者支援助成金」が支給されます。助成金の金額は、短縮された労働時間に応じて決められますが、最大で16万8,000円(2021年度)となっています。
助成金の支給期間は、子が小学校就学までの間に、3歳に満たない期間とされています。つまり、時短勤務を子供が小学生になるまで続けていれば、助成金を受け取れる期間が長くなります。
経済的メリットの比較
給付金の金額だけを見ると、育児休業給付金の方が高額です。しかし、時短勤務の場合は、給与の一部を受け取れるため、手取り額が育児休業中よりも多くなる可能性があります。
経済的メリットを判断するには、それぞれのケースで手取り額を具体的に計算し、比較する必要があります。また、育児休業の延長や、時短勤務の期間によっても、メリットが変わってくるでしょう。
仕事と育児の両立
経済的側面だけでなく、仕事と育児の両立という観点からも、育休と時短勤務を比較する必要があります。
育児休業のメリット・デメリット
育児休業のメリットは、子育てに専念できる点です。一方で、長期間職場を離れることで、キャリアに影響が出る可能性があります。また、休業期間が長くなれば、職場復帰が難しくなる恐れもあります。
育児休業中は、会社からの情報が途絶えがちです。上司や同僚との関係性を維持するためにも、育休中の情報共有は重要でしょう。
時短勤務のメリット・デメリット
時短勤務のメリットは、仕事と育児を両立できる点です。育児に加え、仕事を続けることで、キャリアを維持しやすくなります。
一方で、時短勤務では業務量が減らない場合が多いため、精神的・肉体的な負担が大きくなる可能性があります。また、評価や昇進など、処遇面で不利になるリスクもあります。
個人の状況に合わせた選択
育児休業と時短勤務、どちらを選択するかは、個人の状況によって異なります。子供の年齢や家庭環境、キャリアへの思い入れなどを総合的に判断し、自分にとって最適な選択をすることが重要です。
会社によっては、育休後に時短勤務に切り替えるなど、両制度を組み合わせて利用することもできます。柔軟な働き方で、仕事と育児の両立を目指すことができるでしょう。
社会保険料の影響
育休と時短勤務を選択する際には、社会保険料の影響も無視できません。
育児休業中の社会保険料
育児休業中は、健康保険料と厚生年金保険料が免除されます。ただし、育児休業給付金から労働者負担分が控除されるため、育児休業前と比べて手取り額は減少します。
また、育児休業中は年金に加入しているものの、報酬がないため、将来の年金額が減少する可能性があります。
時短勤務時の社会保険料
時短勤務時は、給与が減少するにもかかわらず、社会保険料が産休・育休前の標準報酬月額に基づいて計算されるため、手取り額が大きく減少してしまう恐れがあります。
このような場合、「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出することで、時短勤務による給与減少に合わせて社会保険料を改定できます。手取り額の大幅な減少を防ぐことができるでしょう。
制度を活用した対策
社会保険料の影響を軽減するため、「育児休業等終了時改定」や「養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置」といった制度を活用することができます。事前に制度の内容を確認し、自分に合った対策を立てることが重要です。
社会保険料の問題は複雑ですが、適切な制度を活用することで、育休や時短勤務による経済的な影響を最小限に抑えられるはずです。
まとめ
育休と時短勤務、どちらを選択するかは、個人の状況によって異なります。経済的側面だけでなく、仕事と育児の両立、キャリアへの影響、社会保険料の問題など、様々な要素を総合的に判断する必要があります。
育休なら子育てに専念できますが、キャリアへの影響が大きくなる可能性があります。一方、時短勤務なら仕事と育児を両立できますが、精神的・肉体的な負担が大きくなる恐れがあります。自分の状況に合った選択をすることが何より重要です。
また、育休と時短勤務の制度を組み合わせて利用したり、社会保険料の影響を軽減する制度を活用したりすることで、より柔軟な働き方を実現できるでしょう。子育てと仕事の両立は容易ではありませんが、自分に合った選択を慎重に行えば、充実した生活が送れるはずです。